指導期間・回数
5年生3月〜6年生1月
週2回 1回1.5時間
目次
5年生の3学期2月の終わり頃、保護者の方から 「地元の公立中学校は、ひどく荒れているわけではありませんが、コロナの対応などあまり良くないと聞きます。 また、担当の先生がだれにあたるかが運次第、進路指導をほとんど行わない先生もいるみたいで不安を感じており、3年後に受験ができる博多女子中への進学を希望しています。 」とご相談があった。
「可能であれば特待生で合格したい」とのご希望があったため、早急に指導を開始しなければならなかったが、運が悪いことに生徒がインフルエンザに感染したため、 3月の中旬ごろに体験授業と面談を行った。
まず初めて生徒にあった印象は、どちらかといえば物静かなでこちらの指示に素直に従えるタイプ。 小学校1年生の妹がいて、精神的に大人な面倒見の良いお姉さんといった印象だった。
体験授業を行ってみると、書く文字は丁寧、基本的な計算も問題なし。気になる点を一つあげるとすれば、割合の問題を「くもわ」という方法論で解いていたことだ。 生徒が言うには、学校でこのように解くようにしか習っていないとのことだったので、改めて指導する必要があると考えた。
それまでに塾で受験対策をしていた経験がなく、受験までの期間が短かったため、お引き受けできないかもしれないと前置きをして面談・体験授業に臨んだが、 基礎的な学力は十分で、大人びた性格は短期間でも特待選抜での合格の可能性を感じたため、ご依頼を引き受けることとした。
(使用した教材)
国語 パーフェクトテスト 国語読解 小学6年(文英堂)
中学入試 国語 暗記分野3700(受験研究社)
算数 小学高学年 自由自在 (受験研究社)
中学受験テキスト 下剋上算数 基礎編(産経新聞出版)
社会 自由自在問題集 中学入試 社会 (受験研究社)
理科 自由自在問題集 中学入試 理科 (受験研究社)
特待選抜入試は、国語100点、算数100点、社会50点、理科50点の合計300点満点である。 そのため、配点が大きい国語と算数を優先して指導することとした。
算数は7月の終わりまでに、小学校で学ぶ内容をすべて終わらせ中学受験で問われる特殊算を指導する。それと並行して、漢字や慣用句、ことわざ、四字熟語などの暗記系を覚えてもらい、授業の始めに小テストを行うこととした。 さらに、社会と理科のプリントを宿題として渡した。この宿題は授業で取り扱うものではなく、解答解説も一緒に渡して、土日などに自学として進めてもらった
8月からは国語の文章読解の練習を行う。出題される問題の傾向や選択問題の選び方、記述のコツを習得してもらう。 秋になると博多女子中の入試説明会が行われるため、そこでの説明を聞いたうえで、9月以降は社会と理科の対策を行うこととした。 11月後半からは、すべての学習を一通り終えて、過去問に取り組むことで、実際の問題の傾向や時間配分を身に着けてもらう。
順調にいけば、かなりギリギリではあるが、十分に合格を狙える水準にまで学力を引き上げることが可能であると判断した。
初回と2回目の指導では、割合の復習を行った。3回目の授業からは指導開始時に漢字の小テストを行うことにした。 上で紹介した教材の内容に従って、漢字を覚えることを宿題として出して、覚えられているかどうかの確認を行った。
初めて行った漢字の小テストは、20点中11点。これでは先に進むことはできない。暗記物は完璧に覚えてもらわなければならない。
生徒なりに十分に勉強したうえでの結果なのか、それとも勉強が足りていないための結果なのかで、対応がかわってくる。 そこで、対策を練るために、「なんで覚えられていなかったのか、自分で理由はわかるかな?」と生徒に聞いてみた。 それが「叱られている」、「怒られている」ように感じさせたようで、生徒は目からポロポロと涙をこぼして黙り込んでしまった。
本人も不本意な結果でショックがある中で、このような聞き方をして追い打ちをかけたのは私の配慮不足。 しかも指導をはじめてから3回目で泣かせてしまうのは大失態。自分の情けなさに落ち込み、反省した。
その後、「叱るつもりはなかったけど、いやな思いをさせてごめんね。 怒っているわけじゃないよ。あなたが覚えたいと思っていても覚えられない状況を改善したいの。 例えば、お腹が痛くて病院にいったときに、お医者さんが食べた物だとか原因として思い当たるものを聞くよね? それと同じように今回覚えられなかった原因をつきとめて、改善できるようにアドバイスしたかったんだよ。」と発言の真意を伝えた。
それに納得してもらえたようで、「私は暗記をするのが苦手で、何回も書いて覚えようとしているがなかなか覚えられなくて困っている」と教えてくれた。
そこで、その回も算数をする予定だったが、暗記の仕方について説明と練習をすることにした。 インプットだけでなくアウトプットにも力を入れること、一度に覚える個数を減らしてみること、一度忘れたものをまた覚えなおすと前よりもさらに深く記憶されること、 エビングハウスの忘却曲線を用いて繰り返し覚えなおすことの重要性を伝えた。
そのかいもあってかその次の回の小テストは満点で、お母さんからは「先生のアドバイスに従って、毎日学校の1Pノートに自分で漢字が覚えられているテストをして、覚えなおしを行っていました」と生徒の様子を知らせていただいた。
当初の予定では、9月の後半から社会・理科を取り掛かることになっていたが、算数の特殊算や国語の論説文の指導が予定通りには進まず、11月になって社会と理科をようやく始めることになった。
それまでにプリントで社会・理科の学習を行っていたが、それでは不十分であったため、入試に間に合うかかなり微妙な状況だった。 そこで理科は入試説明会で言及のあった分野に絞って指導し、生徒に苦手意識がった社会を重点的に指導を行った。 とくに歴史は丸暗記ではなく、時代の流れをつかむ必要があったため、歴史の指導に力を注いだ。
地理、公民分野は、一問一答形式の暗記プリントを渡して、次の回までに覚えてもらいテストをする。歴史はそれとあわせて各時代ごとの要点を解説した。 例えば、江戸の三大改革は、「享保の改革=徳川吉宗」「寛政の改革=松平定信」といった断片的な知識だけでなく、 「享保の改革→田沼の政治→寛政の改革→天保の改革」と次の改革へとつながっていく背景やこれらが江戸幕府の滅亡にどのように影響を及ぼしたかの流れを抑えておかなければならない。
授業ではこのような歴史の説明を行い、宿題として国語や算数の過去問を解いてもらい、丸付けとやり直しをしてもらった。 算数に関しては、生徒のお父さんに間違った問題の解説を行っていただいたため、かなり助けられた。
12月になり本格的に過去問演習を行いはじめた。算数は生徒が得意であるため、あまり心配はしていなかったが、ケアレスミスによる不正解が目立った。 計算の途中で別の数字に入れ替わってしまっておきたミス、単位の変換がされていなかったために起きたミスなど、注意していれば防げるミスで落としてしまうのはもったいない。
生徒のお父さんからもケアレスミスを減らす方法についてアドバイスを求められたため、ケアレスミスノートを作ること提案した。 ケアレスミスが起きたらその詳細をノートに記載しておく。また、再び同じミスを繰り返さなように、予防策を立てて記載を行う。 過去問を解く前や空いた時間にノートを読み返すことで、自分が犯しやすいミスを認知することができ、ミスの予防につながる。 生徒のみで管理するのは難しいため、親御さんも手伝っていただくようにアドバイスした。
冬休みの期間中に行った過去問演習では算数は7〜8割くらいまで取れるようになったが、国語、理科、社会は5〜6割とかなり微妙なライン。 ケアレスミスを完全になくすことができれば、特待での合格の可能性もあり得るという水準までには到達できた。
あとは心身ともに万全の状態で試験に臨めるように体調管理の徹底をするように指示した。
年が明けたらあっという間に入学試験。A日程の入試直前の指導では、「A日程はプレテストを受ける気持ちで受験するように」とアドバイス。 生徒が言うには、筆記試験も面接も緊張することなく受験することができたそうだ。受験から3,4日後には合格の知らせが届き、まずは博多女子中に進学できることが確定した。
本番は特待選抜入試。 生徒には「やれることはすべてやりきった。 受験結果がどうなるかは、時の運。 その結果によって、あなたの努力やあなた自身が肯定されたり、否定されることはないからね。 この9か月間を頑張ってきたことで、あなたは学力的にも精神的にも大きく成長することができた。 だから自信をもって受験してきてね。」と伝えて、最後の指導を終えた。
合格発表日、朝9時の合格発表の直後に、お母さんから特待選抜入試に合格したことの報告がLINEに届く。 たくさんの感謝の言葉をいただいたが、わずか9か月で合格を勝ち取ることができたのは、生徒の懸命な努力と、ご家族の手厚いサポートの賜物。
博多女子中学校での3年間が生徒にとって充実したものとなり、高校受験時には私が指導したことを活かしてさらなる飛躍をしてくれたらうれしく思う。