小学5年生の春から指導開始。 小学校では算数と国語(漢字)が不得意で、授業中に落ち着きがないと指摘される。 生徒のお父さんは小学校の校長先生をされており、当時の担任は元同僚で、 その担任の「先生から落ち着きのなさは劣等感や不安感から来ているもののように思う。 学生の家庭教師ではなく専業でされている家庭教師の指導を受けてみてはどうか?」と助言を受け、私の元に連絡が入る。
最初はお母さんと2人だけでカフェで面談を行った。 お母さんは大学の教員をされており、ご両親ともに帰宅が遅いため、普段は祖父母が自宅まで来て夕食の準備などを行っているそうで、お母さん自身も子育てに対して少し神経質になっているような印象を持った。 そのため、生徒の授業中の様子を担任から指摘されたことに対して、ショックを受けているようだった。
学校のテストではめったに100点を取ってくることはなく、通知表は、よくできるが3つ、もうすこしも3つ、あとはだいたいできる、といった感じ。 2歳年上のお姉さんは、頻繁に100点を取ってたし、通知表はよくできるが20個くらいあったそうで、 「なぜここまで違うのか、生まれつきの能力の差でどうしようもないのか」と困惑している様子であった。
面談の翌週に生徒と対面し指導を行うが、「なぜ自分だけ家に帰ってまでも勉強しなければならないのか」と非常に不服そうな態度であった。 抗議の意味も込めて、あえて雑に文字や数字を書いている感じがした。 いきなり厳しく指導しても反発されるだけなので、まずは優しくいって書き直しをさせた。
学習に対する苦手意識や不安、劣等感が強い生徒には、まず多くの成功体験をしてもらい自信を持ってもらうようにしている。 そのため、小学校3年生のプリントを用いた指導を行う。いくつかミスがあったが、だいたい出来ていた。 ただ、文字が凄く雑なのと、トイレに行きたいといって15分、20分と席外し、隣の部屋にいるお祖母さんに捜しに行ってもらうことが続いた。
2,3回授業を行ったところで、お母さんから「家庭教師を辞めさせたい」との連絡が入る。
電話で話を聞くと、生徒が「簡単な問題ばかりをさせてバカにされている感じがして嫌だ」と訴えていることや、 私が厳しく指導していないことに対して納得がいかないとのことだった。
そこで、厳しく指導しない理由や3年生から復習させる意図について、またその3年生の問題も十分に理解できていないこと、 また今ここで辞めてしまったら生徒にとって良くないということ、を伝える。
幸いにも私の指導方針に納得していただけて、授業を続行することがきまる。
意図せずとも生徒のプライドを傷つけてしまっていたことを反省し、復習する量を減らし、そのかわりに学校の授業の予習を行うようにした。
そうすると、以前と比べると、少しだけ前向きに私の授業に取り組むようになっていったように感じる。 さらに漢字のミニテストを行うと、8割近くコンスタントに正解するようになり、それを見た生徒が「だいぶ覚えられてきたな」とつぶやく。 生徒が学習に興味を持ち、自己分析を行っている様子をみて、とても嬉しく感じた。
学校のテストでも100点をとってくることが増え、担任の先生からも授業中の様子も積極性が出てきたと連絡がきたそうだ。 お母さんからは「先生が根気よく教えてくれたのと、予習形式で授業を行ったのが良かったんだと思います。」とおっしゃっていただいた。
5年生の2学期の通知表は、よくできる11個になり、生徒はとても喜んでいたそうだ。
やはり3年生、4年生の内容が定着していなかったため、学校の授業を十分に理解できていなかった。 そのため、時間をかけてきちんと復習したことが、学校の授業に取り組む姿勢に良い影響を与えたのだと思う。
残念ながら中学入学以降のスケジュールがあわず、指導を継続することができなかったが、きっと中学校でも前向きに勉強に取り組んでくれるだろうと思う。