子どもは生まれてから成人するまで、親からさまざまな影響を受けて育ちます。その親が子どもに与える影響について、社会学の側面から書こうと思います。
まず、子どもは成人(社会人、社会人間)になるまでに、大人からさまざまな働きかけを受けます。とくに親から受ける影響は絶大です。家庭内においては、親から子どもに働きかけ、子どもはそれに反応し、その反応によってまた新たに働きかける。この一連の過程を「社会化」といいます。
社会化は、社会化する主体のソーシャライザーと社会化される客体のソーシャライジーの相互作用によって進行していきます。
この文章だけ見ると、何のことを言ってるのか、さっぱりわからないと思います。簡単に言うと、家庭教育とは、「働きかけを行う(社会化する)親と、その働きかけに影響を受ける(社会化される)子どもとの相互関係」によって成り立ちます。
当たり前のことですね。
そして、ここからが本題です。この社会化には、以下の図の4つに分類されます。
(T)しつけ
これは、親が意図的に教え、子どももその教えに従おうとする場合です。
親「お菓子を食べたら、歯みがきをしましょう。」という親の働きかけに対して、「虫歯になったら嫌だから、ちゃんと歯みがきしとこう。」という子どもの反応が「しつけ」です
よく児童虐待のニュースで「しつけのために叩いた」なんて言う親がいますが、社会学の観点からも明らかに間違っていることがわかります。
(U)模倣(もほう)
親は無意識にとった行動を、子どもが意識的に親の真似をする過程です。前回の記事の勉強する親の真似をする子どもの例は「模倣」です。
親が仕事、勉強をしている姿にあこがれて、お手伝いや勉強という形で真似をする場合。親の言葉使い、仕草、嗜好など、子どもが意図的に吸収します。「子は親を映す鏡」とは、この「模倣」のことです。良くも悪くも、子は親に似るということですね。
(V)感化(かんか)
親は子どもに影響を与えようと働きかけるのですが、子どもはその意図に気がつかず、知らず知らずのうちに親の意図する方向に形成されることを「感化」といいます。
具体的には、親が意図的に勉強している姿を子どもに見せることで、子どもの意識に勉強することが当たり前ということを刷り込むという働きかけが、この「感化」に当たります。前回の記事は、この働きかけを小さいうちから行うといいですよ・・・という内容でした。
(W)薫化(くんか)
これは、親も意図的に教えようとせず、子ども意図的に学習しようとするわけでもない状態です。つまり、その家族の生活過程を子どもが知らず知らずのうちに吸収していくパターンです。それを「薫化」といいます。
にぎやかなご家庭では明るい子が育ちますし、逆に夫婦間の不調和などによって家庭内が暗い雰囲気に包まれると子どもはその影響を受け陰鬱になっていきます。家庭内の情緒的雰囲気が子どもの発達に影響を与えます。
この4つの社会化形態のうち、家庭教育とは、親が意図的に働きかける「しつけ」と「感化」を指します。
前回の記事の最後に、「子どもは大人から命令されたことはしない。むしろ大人の真似をするのである」というアルバート・バンデューラの名言を書きました。
少し言いすぎな部分もありますが、親が実際にお手本を見せることも、とても重要なことだと思います。
子どもに勉強させる習慣を身につけさせたいのであれば、仕事や趣味に関係することでもいいので、勉強している姿を見せてあげてください。子どもは「親ができるんだから、自分もできるはず」と意識的・無意識的にも感じます。それくらい、親子のつながりは強いのです。
勉強だけではなく、社会常識、生活習慣など、子どもが大人になるために身に着けないといけないことはたくさんあります。
「言うは易し、行うは難し」思い通りに教育することは難しいと思います。しかし、お子さんに根気良く働きかけていけば、きっと成果はでるでしょう。
とくに無意識への働きかけは、良くも悪くも子どもに深い影響を与えます。私にはまだ子どもはいませんが、いずれ実践していければいいなと思っています。
2013年5月9日更新
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