家庭教師の指導中、中学校の授業進行状況を見るために教科書やノートを見せてもらうようにしています。 定期試験範囲の対策や、宿題にワークを解かせて試験前に溜め込まないようにするためです。
そこで気になったのは、「プリント学習」の授業がとても多いということです。 「プリント学習」とは、教科書とノートを使用せずにプリントのみで行われる授業のことです。
プリント学習には、メリットがあります。 それは、生徒が板書を写す必要がないため教師の話を集中して聞ける、 生徒が板書を写す時間を考慮しなくてすむので授業進行がスムーズになる、などです。生徒にとってのメリットというよりは、教師にとってです。
一方でデメリットもあります。それは、ノートの使い方が上達しない、
教科書を読む習慣がつかない、
これでは、自ら勉強する力、習慣が絶対に身につきません。授業の予習は、中学生にとって必要不可欠です。 その予習すらもプリントがないからできないという状況になります。
私の経験ですが、中学時代(15年前)も、英語はプリントを利用することが多かったと思います。 しかし、それ以外の教科では、教科書・ノートがメインの授業がほとんどでした。高校時代は、ほぼ教科書とノートを利用した授業でした。
プリント授業が多くなったのは大学からです。私は医療大学に在籍していましたから、専門科目の教員は医療従事者でした。 彼らは、教育・研究・臨床を同時にこなさなければなりません。
それを考慮すると、臨床で患者の治療をメインでしている先生は「プリント学習」でも仕方ないと思います。 それに、臨床メインの先生の教育力が発揮されるのは、実技実習や臨床実習で、ですからね。
一方、研究メインの先生の授業は、とてつもない量の板書でした。授業が終わったころには、手や指が痛くなり、腕が痙攣します。 しかし、プリント学習の授業よりも、ずっとわかりやすかったです。さらに、他の科目よりも興味が持てました。
書くことに集中して聞き漏らしがあったとしても、あとから聞きにいけばいいのです。 まぁ、「授業外で質問されるのが嫌だ」、もしくは「授業中も質問されたくない」と言う理由で、プリント学習を選択される先生もいらっしゃるそうですが・・・。
話を戻しますが、書くことに慣れていない生徒は、このような板書の量が多い大学以降の授業にはついていけないと思うのです。 書き写せないから、「試験前に他人のノートをコピーすれば良い」と開き直ってしまいます。ダメ学生の典型ですね。
大学もピンキリですから一概には言えないでしょうけど、「無知は罪」が基本原則の医療系では、ついていけません。
また、自分なりにノートにまとめるという、勉強の基本ができません。教科書を読まない、ノートの使い方が下手なので、まとめられないのです。
プリント学習が通用するのは、無条件で進級・卒業の出来る中学校卒業までです。 中学校の先生方には、10年後の成長した生徒の姿を想像しながら、授業を行ってほしいものです。
それに、教科書などの代金は、税金から支払われています。 先生方には、このことも考えながら、授業運営をしていただきたいと思います。 子ども達の「社会から勉強させてもらっている」という自覚が足りなさすぎるように感じるのです。
次世代の社会を支える人を育成するためには、社会の中の自分を強く意識させる教育が必要だと思います。(おわり)